2010年04月21日

渡辺武|なで肩の狐・凶殺(1999年公開作品)

な〜んだヤクザ映画か。と片づけたらもったいない。椎名桔平主演「なで肩の狐・凶殺」。少し薄まってはいるけど、花村萬月のあの感じとあの視線がよく撮れてると思う。おこがましくなくて、懐が深い。設定は原作と少し違っているんだけど、セリフはほぼそのまま使われているものもあって、それがまた良いんです。何でもないようで何とも味わい深い作品。

法律やら規則やらルールとやらでは括ることのできない男、キツネ。そもそも誰も括れるものではないと思うんだけれども、みんなその中に収まって暮らしてるのかもね。キツネは、はみ出しちゃってる。具体的に何からどうはみ出してるのかは観て感じればいいと思うけど、そこに向けられた視線が、花村萬月だよな〜って思う。だからどうってことじゃないんだ。

話はいたってシンプルで、主人公キツネ(元ヤクザ)の前に昔の仲間(現役ヤクザ)が現われて面倒に巻き込まれてゆく展開。そのキツネ役の椎名桔平が良い。湿った暗さがない。悲しくて可笑しい。でも決してタナトスまっしぐら!ではなくて、昨日とは違う明日になるであろう終わり方もいい。何をどーこーじゃなくてね、こーゆー作品を観ると、映画っていいな〜って、しみじみ思ってしまう。

映画「なで肩の狐」DVD原作:花村萬月『なで肩の狐』
監督:渡辺 武 「凶銃ルガーP08」「蘇える金狼」「リボルバー」ほか
脚本:吉川次郎 「つげ義春ワールド」「小森生活向上クラブ」ほか
撮影:安藤庄平 「ヌードの夜」「遠雷」「死の棘」ほか
編集:太田義則 「ソナチネ」「HANA-BI」「アウトレイジ」ほか
出演:椎名桔平、洞口依子、鶴見辰吾 ほか

なで肩の狐 (新潮文庫)  
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2010年04月15日

コーエン兄弟|ノーカントリー(2008年日本公開作品)

観たかったのに観てない映画ってけっこうある。コーエン兄弟監督「ノーカントリー」。ま〜バイオレンスです。それもかなりの。バンバン死にます。ガンガン殺します。躊躇なく。有無を言わさず理不尽に。たぶん北野監督の「OUTRAGE」どころの騒ぎじゃないでしょう。ここに登場する殺し屋シガーは悪党とかワルとか極悪非道なんてもんじゃなく、善悪では測れない情緒ゼロの男。完全に逸脱してる。

物語りは、思いがけず手にした大金を持って逃げるベトナム帰りのタフなモスと、それを執拗に追うサイコな殺し屋シガーを中心に進む。そして少し距離を置いて2人を追う昔かたぎの保安官ベル。ベルは時代を憂いて諦め顔なんだけど、終盤で変わるんです。でもね、もうストーリーはあってないようなもの。逃げる追う逃げる追う。圧倒的な迫力で殺しながら追いつめてゆくシガー。もはやなぜ逃げるのかさえ解らなくなってくる。そしてテキサスという背景。そこに全てが飲み込まれてしまうかのよう。

モスとベルには優しい妻がいる。殺されてゆく善良な市民。そこには普通のアメリカがある。だが人物の個人的背景はほぼ描かれず、余計な説明は一切なし。すごい緊迫感で観てて疲れるんだけど、シガーがあまりに超絶すぎてもう釘づけ。残酷なはずなのに観てるうちに抽象的に思えてくる。中途半端な暴力は無く中間が無い。次の瞬間もう死んでいるのだ。その前置きのないバイオレンスの奥から非言語的なものをドーンと受け取る。かなり好きです。高級な映画だと思う。

コーエン兄弟監督作品「ノーカントリー」DVD原題:No Country for Old Men
原作:コーマック・マッカーシー『No Country for Old Men(血と暴力の国)』
製作:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン、スコット・ルーディン
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
撮影:ロジャー・ディーキンス
美術:ジェス・ゴンコール
出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン

ノーカントリー Japan Official >>


血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)←原作本:血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)


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Posted by 真 at 00:00 |livedoor clip!