2010年04月26日

コーエン兄弟|バーバー(2001年製作)

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…。っていうか、ブラックでハードボイルドなクライム・サスペンス。原題を直訳すれば「そこにいなかった男」。なんとま〜虚無的なタイトル(笑)。この時点でもう映画は半分観たようなもの。邦題は「バーバー」ですけどね。ニーチェの言葉を借りるなら「人間的、あまりに人間的な」主人公のお話です。

1949年の古き良きアメリカ。主人公エドは小さな街の小さな床屋で働く無口な男。ある事をきっかけに彼の運命がとんでもない方向に転がり出す。映画は最初から最後まで、過去を振り返るように語るエドの独白が入って、徹底的にエド目線。ニーチェの「この人を見よ」よろしく“エドを見よ”と。そーゆーことらしい。いっそ邦題はそのまんま「エド」でよかったのでは。

主人公のエドは、どーしよーもなくエドで、エネルギーを秘めつつも台風の目のよう。そこだけ風ひとつ吹いてない。でもエドを中心に渦はどんどん大きくなって結末に向かって加速する。と同時にブラックさ加減も加速。そのブラックさ加減が、噛めば噛むほど効いて来る。そしてその効いて来た先が、行き止まりでも袋小路でもない。

映画なので、2時間ほどの時間をかけて、ある意味、遠回しに描かれているわけですが、彼らの作品からはいつも、非言語的なものをドーンと受け取る。しかもそれが直球だったりする。彼らは変化球の達人なのに、観終わった頃、どこからともなく重たいストレートが飛んでくる。その見えない魔球をバシッと受け取った時、手が痛いんだよね(笑)。コーエン兄弟、恐るべし。

コーエン兄弟監督作品「バーバー」原題:The Man Who Wasn't There
製作:イーサン・コーエン、ジョン・キャメロン
監督:ジョエル・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
撮影:ロジャー・ディーキンス
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、フランシス・マクドーマンド、ジェームズ・ガンドルフィーニ
アメリカ/モノクロ/116分(DVDはカラー版もあり)

ちなみに、左の画像は米国版の宣伝用キービジュアル。
以下、予告編です。

渡辺武|なで肩の狐・凶殺(1999年公開作品)野菜をつくるひとびと。